【全5話・第4話】顔パスの正体と最後の切り札
「使用済み……だと!?」発券ゲートの赤点滅を前に、俺の意識は一瞬遠のいた。
「えっ、おかしいなー!昨日テンション上がりすぎて自分で一回画面タップしちゃった☆」とかぬかすサトシを本気で殴りそうになったが、ここで暴れたら即出禁である。開演を告げる開場前BGMが重低音となって足元から響いてくる。俺たちの所持金は合算しても840円。追加の当日券を買う余裕なんて一ミクロンもない。俺の痛バッグに敷き詰められた缶バッジたちが「お前、ここまで来て諦めるのか?」と嘲笑っているように見えた。
その時だ。「おい、そこの君たち!」と声をかけてきたのは、怖面の警備責任者・ガンコ親父だった。万事休すか……と思いきや、親父はサトシの胸元を二度見した。「君、さっき裏の搬入口で資材運ぶの手伝ってくれた学生さんか?」「あ、はい!パイプ椅子重そうだったんで!」……なんとこのポンコツ、俺と合流する前にスタッフの業務を善意で手伝っていたらしい。「スタッフ証の発行が間に合ってなくてな。助かったよ」親父は腕組みをして不敵に笑った。「ライブが見たいのか?なら、開演中の急募スタッフとして中に入るか?ステージ袖の機材搬入補佐だがね」
「マジですか!?」俺とサトシの目が輝く。チケットがダメなら、スタッフとして侵入する!これぞ逆転の発想だ。俺たちは速攻で黄色い「STAFF」ビブスを渡され、楽屋裏へと案内された。通路を抜けると、重低音のドラムと歓声がダイレクトに肌を刺す。生音だ!俺は興奮で震えた。スタッフとはいえ、憧れのアルティメット・パンプキンの演奏を間近で聴けるのだから!
だが、人生そう甘くはない。ステージ袖に到着した瞬間、照明スタッフが青ざめた顔で俺たちに駆け寄ってきた。「おい新人!大変だ!キーボードのタカシさんが大事なエフェクター忘れて開演できない!楽屋から走って持ってきてくれ!!」……え、俺、ただの物販オタクなんですけど!?
※この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。