【全5話・第1話】推し事の最中に奇跡が起きた話
人生で一番気合を入れた痛バッグが、まさかあんな悲劇を招くなんてこの時の俺は知る由もなかった。
どうも、底辺社会人オタクの「タカ」です。俺が人生を捧げているのは、爆音重低音とエモい歌詞で巷を賑わせている架空のモンスターロックバンド『Lumina Edge(ルミナエッジ)』。来週はいよいよ、彼らの結成10周年を記念した日本武道館ワンマンライブが開催される。
俺はこの日のために、半年前から準備を進めていた。メルカリや現地交換で集めまくった推しメン(ベースのREO)の限定缶バッジ、実に80個。夜な夜な針で指を刺しながら痛バ(痛バッグ)を組み上げ、ラバーストラップと自作のラミネートカードで隙間を埋めた。総重量およそ3キロ。まさに俺の情熱と血汗涙の結晶だ。これを持って、気合を入れた参戦服で現場に殴り込む。考えただけで震える。
そして迎えたライブ当日。武道館の熱気は異常だった。物販列に並び、ファン仲間に痛バを褒められ、最高の気分で開場を待っていた時のことだ。
「あの、すみません……!」
突然、背後から声をかけられた。振り返ると、青ざめた顔をした見知らぬオタクが立っていた。おいおいどうした、チケットでも忘れたのか?と思った瞬間、そいつが放った一言で俺の血の気が引いた。
「それ、REOさんの超激レア初期缶バッジですよね……? 実は、それについてすごく大変なことが起きてて……」
え、大変なことって何!? 俺の痛バが爆破でもされるの!?次回、事態は思わぬ方向へ駆け出す!
※この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。