【全5話・第1話】推しの限定缶バッジが運命を狂わせた話

【全5話・第1話】推しの限定缶バッジが運命を狂わせた話 の挿絵

人生最大の賭けに勝った。そう思った瞬間が、俺の人生のピークだったのかもしれない。

俺、通称「ポチ」。30代手前の冴えないサラリーマンだが、週末は最推しロックバンド『ルミナス・ディザスター』の現場で痛バッグを背負う、生粋の「現場主義オタク」だ。ルミナス(通称ルミディ)のツアーファイナル東京公演当日、俺は始発で会場に並んでいた。目的はただ一つ。1口500円のカプセルトイでしか出ない、全国で10個限定の「箔押しサイン入りシークレット缶バッジ」を手に入れること。

物販開始から3時間、極寒の物販列で耐え抜き、俺はついに回した。ガシャポン……コロン。出てきたカプセルを開けた瞬間、後光が差した。マジで出たのだ。光り輝く箔押し缶バッジが!

「よっしゃぁぁぁ!!」と心の中で叫びつつ、速攻で俺の愛用している漆黒の痛バッグ(中央の特等席)にそれを装着した。これで俺の痛バは完成した。無敵の装備を手に入れた俺は、興奮冷めやらぬまま開場までの時間を潰そうと、近くのスタバに駆け込んだ。

だが、この時の俺はまだ知らなかったのだ。限定バッジの威力が、まさかあんな悪夢……いや、奇跡を引き起こすなんて。

カフェでドヤ顔で痛バを膝の上に置き、キャラメルマキアートをすすっていた時のことだ。突然、背後から「あ、あのっ……!」と震える声で話しかけられた。振り向くと、そこにはルミディの参戦服に身を包んだ、めちゃくちゃ可愛い女の子が立っていた。しかし、彼女の目はなぜか血走っており、俺の痛バの「中央」を穴があくほど見つめていて――!?

※この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。

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