【全5話・第2話】目の前の女子が放ったヤバすぎる一言
「あの……それ、どこで手に入れました……?」
目の前の参戦服女子――レースとリボンで完璧に固めた推し活女子が、血走った目で俺の痛バッグを凝視している。正直、逃げ出したいくらい圧がすごい。
「えっと、さっきの先行物販のガチャですけど……」
俺がそう答えると、彼女は「やっぱり……!」と小さく叫び、ガバッと頭を下げてきた。カフェの店内なのに完全に悪目立ちしている。おいおい落ち着けって!
「お願いです!その『ルミナス・ディザスター』の限定箔押し缶バッジ、私の持っている過去の超レアグッズ全部と交換していただけませんか!?」
そう言って彼女がテーブルに広げたのは、今では入手困難な初期のラバーストラップや限定ラミネートカードの山だった。なんだこの石油王みたいなラインナップは……!
話を聞くと、彼女は今日のライブでこのバッジを手に入れるために徹夜覚悟で遠征してきたらしい。だが直前で売り切れてしまい、絶望していたところで俺の痛バを見かけたのだという。
「でもこれ、俺もずっと欲しかったやつで……」
俺が困惑しながら断ろうとすると、彼女はウルウルとした瞳で俺の顔をまっすぐ見つめてきた。
「……あ、あの!私、決して怪しい者じゃないです!名前はミナって言います!お願い、断る前に一度だけ、私の推しへの愛を聞いてください!」
そこから始まったのは、怒涛のルミディザトークだった。アルバムの隠しトラックのベースラインが良いだの、ボーカルのMCの伏線回収が神だの、マニアックすぎる視点が俺と完全に一致している。
(うわ……この子、見た目は可愛い系なのに、中身は俺レベルの重度なオタクだ……)
気づけば俺たちは意気投合し、推し語りで大盛り上がりしていた。こんなに熱く語り合える奴に出会ったのは生まれて初めてかもしれない。胸の奥がキュンと熱くなるのを感じていた。
しかし、楽しい時間は一瞬で吹き飛んだ。
「あ、そろそろ開場時間ですね!一緒に行きま……あれ?ポチさん、チケット見せてもらってもいいですか?」
俺がスマホの電子チケット画面を見せると、ミナちゃんの顔色がサッと青ざめた。
「え……嘘でしょ? ポチさん、そのチケット……!」
※この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。