【全5話・第3話】画面に映った禁断の席番号
「え、ちょっと待って……ポチさん、そのチケット……!」ミナちゃんの顔から完全に血の気が引いていた。俺のスマホ画面を凝視したまま、固まっている。
何かやらかしたか!? 転売サイトで買ったわけじゃないし、公式ファンクラブの最速先行で当てた正真正銘のプラチナチケットだ。まさかシステムエラーで無効化されたとか!? 一気に冷や汗が吹き出し、胃がキュッと痛む。「な、なに? 俺のチケット、なんかマズい……?」と震える声で尋ねると、ミナちゃんは震える指先で俺の画面の『座席番号』を指さした。
「アリーナA2ブロック……3列目、12番……?」ミナちゃんが絞り出すような声で呟く。「それ……私の隣の席です」
え?????
一瞬、意味が理解できなくて頭の中の痛バ(缶バッジ40個装着)がガラガラと崩れ落ちる音がした。キャパ1万人超のドーム規模ライブで、FC先行とはいえ、カフェで偶然出会って推し語りしたオタクと『連番』状態!? 確率にして何万分の一だ?? 「マジで……?」「はい……私、11番です……」二人でスマホ画面を並べて見比べると、確かに数字が綺麗に並んでいる。うそだろ、運命の神様、脚本出来すぎてないか!?
「ヤバい、凄すぎる!!」一気にテンションが爆発した俺たちは、鳥肌を立てながら開場列に飛び込んだ。開演までの待ち時間も、隣同士で「この曲のイントロのドラムが〜」とか「今日の衣装、絶対初期の黒レザー踏襲してるよね」とか、マニアックな会話が止まらない。一人参戦の寂しさなんて木端微塵に吹き飛んでいた。ミナちゃんの横顔を見ながら、俺の心臓はライブ前のアドレナリンとは明らかに違うリズムでドクドクと高鳴っていた。
そしてついに、場内が暗転。爆音の重低音とともに『ルミナス・ディザスター』のメンバーがステージに姿を現した。狂喜乱舞する会場。俺とミナちゃんも全力でペンライトを振って叫ぶ。最高の夜だ。そう思った、まさにその時。
ヴォーカルのハルキがマイクを握り、曲の合間のMCで衝撃の言葉を放った。
「今日のライブ、実は重大な発表があります――」
その瞬間、ミナちゃんが突然「嘘……なんで……」と崩れ落ちるようにその場にしゃがみ込んでしまったのだった。
※この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。