【全5話・第4話】暗転のドーム、そして突きつけられた残酷な真実
「本日の公演をもって、ルミナス・ディザスターは……解散します」
ヴォーカルのハルの一言がドーム全体に響き渡った瞬間、僕の時が止まった。悲鳴と叫び声で揺れるアリーナ席で、ミナちゃんはただ力なく床に崩れ落ち、肩を激しく震わせている。痛バッグから零れ落ちた限定缶バッジが、虚しく照明の光を反射していた。
「ミナちゃん、大丈夫……!?」
慌てて彼女の肩を支えようと手を伸ばすが、彼女は声の出ない口で「うそ……やだ……」と繰り返すばかり。僕自身、長年追い続けたルミディザの解散という事実に心臓が破裂しそうなほどショックを受けていた。でも、目の前でボロボロと涙をこぼすミナちゃんを前にして、自分が落ち込んでいる場合じゃないと必死に涙を呑み込んだ。
アンコールが終わり、場内が明るくなってもミナちゃんは立ち上がれずにいた。僕は彼女の荷物をまとめ、そっと背中に手を添えて、人混みを避けるように会場の外へと連れ出した。
夜風が冷たいドームの敷地外のベンチで、僕は自動販売機で買った温かい緑茶を彼女に渡した。
「……ありがとう、ポチさん」
少し落ち着いたミナちゃんは、真っ赤な目で僕を見つめ、静かに語り始めた。
「私、ハルさんの実の妹なんです。……ハル兄、ずっと持病で限界だったのに、ファンを悲しませたくないって、無理してステージに立ち続けてて……。私、止められなかった」
衝撃の事実だった。推しバンドのヴォーカルと彼女が兄妹……!? だから彼女は、誰よりもハルさんの体調やバンドの未来を心配して、あの『重大発表』の瞬間に絶望していたのだ。
「兄の夢を守りたくて、私も影から全力で推し活して……。でも今日で、私のすべてが終わっちゃった」
絶望に打ちひしがれるミナちゃん。しかし僕は、彼女の手を強く握りしめていた。
「終わってないよ! ミナちゃんが隣にいてくれたから、僕は今日のライブ、世界で一番熱くなれたんだ。バンドが解散しても、ミナちゃんがルミディザを愛してきた時間は消えないよ」
僕の言葉にミナちゃんは目を見開き、ポロポロと新しい涙を流した。そして、僕の手を握り返してくれた。
「ポチさん……私、あなたに出会えてよかった」
街灯の下で見つめ合う僕とミナちゃん。胸が痛いほど高鳴り、解散の悲しみを超えて、僕たちの絆が確かに結ばれた――そう確信した次の瞬間だった。
「おい、ミナ!! なんでお前が男とそんなところにいるんだ!?」
怒声とともに現れたのは、ライブを終えたばかりの変装姿のヴォーカル・ハル本人だった!?
※この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。