【全5話・第3話】開演15分前の絶望と謎の救世主
開演まであと15分、目の前で崩れ落ちる連番者と、手元にあるはずのないチケット。
「……マジで言ってる? 電車で2時間の距離だぞ!?」
俺の叫びは、会場付近のガヤガヤとした熱気に呆気なくかき消された。
「LUNA EDGE」の年に一度のアリーナワンマン。しかも今回の席は、俺と連番者のタカシが半年間徳を積みまくって当てた、アリーナ最前ブロックの超神席だ。痛バに敷き詰めた推し・KAI様の限定缶バッジたちも「おいおい嘘だろ」と言いたげに光っている。
「ごめんサトシ、昨日カバン変えた時に出し忘れて……」と半泣きのタカシ。今から取りに帰ったら終演にしか間に合わない。電子チケットの分配も不具合でエラー連発。詰んだ。完全に詰んだ。俺一人で入るか、いや連番で入る約束を破るのも後味が悪すぎる……。
頭を抱えてパニックになっていると、不意に背後から声がした。
「……サトシさん? どうしたんですか、顔青いですよ」
振り返ると、開演前に痛バのピンチを救ってくれた黒づくめの青年、レンだった。
事情を早口で説明すると、レンはフッとクールな笑みを浮かべ、ポケットからスマホを取り出した。
「奇遇ですね。実は俺、今日一緒に入るはずだった連番が急病で来れなくなって、アリーナ最前ブロックのチケットが1枚余ってるんです。電子チケだから即分配できますよ」
「えっ……!? でもそれって、レンさんの友達の分で……」
「空席作るくらいなら、KAI様を全力で崇める戦友に使ってほしい。タカシさん、俺のチケットで入りなよ」
レン神すぎるだろ!! 涙目になりながら感謝し、俺たちは奇跡的に開演5分前ギリギリで入場を果たした。
爆音の重低音、激しいレーザー演出。ついにLUNA EDGEのメンバーが登場し、会場の熱気は最高潮に達する。KAI様の圧倒的なギターソロに俺とレンは連番で狂喜乱舞し、銀テープを奪い合うように掴み取った。
ライブは大成功。終演後、興奮冷めやらぬまま会場外でレンとお互いの健闘を称え合っていたその時だった。
「レン、探したぞ! なんで連絡つかないんだよ!」
突然、スタッフパスを首から下げたスーツ姿の厳つい男が、レンの腕を掴んだ。
え……? スタッフ? レンってただの古参ファンじゃないのか……?
※この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。