【全5話・第4話】高級コートの代償と提示された禁断の条件

【全5話・第4話】高級コートの代償と提示された禁断の条件 の挿絵

提示された金額を見て、俺の視界は完全にホワイトアウトした。
「ひ、ひゃくはちじゅう万……!?」
俺の叫び声が、終演後の静まり返った楽屋裏の廊下に空しく響き渡る。強面VIPサマこと大河内(おおこうち)さんは、フッと不敵な笑みを浮かべながら、手帳に挟んだ領収書をポケットに仕舞った。
「当然だ。イタリアの最高級ビスポーク(注文服)だからな。で、どうする? 今すぐ一括で払うか、警察に行くか」
「ど、どちらも無理です! 俺の口座には今、痛バの缶バッジをメルカリで買い集めたせいで、8000円しか入ってません!」
俺は土下座の勢いで頭を下げた。最前列でメタギャラのKATSUさんのソロパートに狂喜乱舞していた数分前の自分を全力で殴り飛ばしたい。
すると、大河内さんは腕を組み、ニヤリと顔を歪めた。
「……まあ、お前が熱狂的なKATSU推しであり、あの痛バの缶バッジの配置に並々ならぬ『美学』を感じたのも事実だ」
「え?」
「来週、俺が主催する海外投資家向けの立食パーティーがある。そこで『日本のポップカルチャーと伝統の融合』をテーマにした展示ブースを出さなきゃならんのだ。そこで俺の横で、お前のその痛バ職人としての技術を存分に発揮してもらう」
「は……? 痛バで返済……!?」
理由がまったく意味不明すぎるが、背に腹は代えられない。俺は返済免除の条件として、まさかの「痛バ設営スタッフ」として大河内さんのパーティーに同行することになったのだ。
そして一週間後。俺は借り物の慣れないスーツに身を包み、高級ホテルの豪華絢爛な会場にいた。大河内さんの指示のもと、海外のVIPたちが集まるブースで、俺が持ち込んだ激レア缶バッジ100個とラバーストラップを駆使した『究極のメタギャラ痛バ』を設営。なぜか富裕層の外人たちが「OH… AMAZING JAPANESE ART!」と目を輝かせて集まってきた。
「よし、タカシ。掴みはバッチリだ。このまま乗り切ればコート代は全額免除にしてやる」
大河内さんが満足そうに頷いたその瞬間だった。
会場の巨大スピーカーから、手違いなのか突然メタル・ギャラクシー・スターズの爆音重低音イントロが流れ始めた。
(嘘だろ……これ、俺がスマホからBluetoothで間違えて飛ばした曲じゃねえか!?)
パニックになった俺が慌ててポケットのスマホを取り出そうとした瞬間、手が滑って痛バの「ラミネートカード装着用ギミック」が大河内さんの高級スーツの裾にガッチリと引っかかった。
「おい、タカシ、やめろ――」
ビリリリリリッ!!!
会場全体に響き渡る、あまりにも鮮やかな布の裂ける音。
大河内さんのズボンが、お尻の部分から見事に真っ二つに裂けた。

※この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。

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