【全5話・第1話】痛バと失くした限定ラバーストラップ

【全5話・第1話】痛バと失くした限定ラバーストラップ の挿絵

人生で一番気合いを入れた痛バッグが、まさかあんな悲劇を生むなんてこの時の俺は知る由もなかった。
俺の名前はタカ。推し活歴5年、愛してやまない爆音系ロックバンド「ルナ・シーカーズ」の現場には全国どこへでも飛んでいく自称・熱血ソロ参戦組だ。

今日は待ちに待ったツアードーム最終日。俺は自作の超巨大痛バッグを抱え、全身推しカラーの参戦服に身を包んで会場に降臨した。バッグ一面を埋め尽くす缶バッジの数、なんと80個。総重量は軽く鈍器レベルである。これぞ愛の重さ、推しへの誠意だ。
だが、物販に並んでいる最中に事件は起きた。
ふと痛バのサイドポケットを見ると、今日のために苦労してメルカリで高額転売屋と戦い勝ち取った限定レア「光るラバーストラップ」が無い……!?
「嘘だろ……落ちた!? どこで!?」
冷や汗が吹き出し、視界が真っ暗になる俺。缶バッジの重みでファスナーが開いてしまったらしい。必死で地面を這いつくばって探していると、後ろから声をかけられた。
「あの、これ探してますか……?」
振り向くと、そこには俺と同じルナ・シーカーズの激レアTシャツを着た、目元が涼しげなめちゃくちゃ綺麗な人が立っていた。その指先には、俺の命の次に大切なラバーストラップが握られていて——。

※この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。

← 記事一覧にもどる