【全5話・第2話】銀テープの奇跡と謎の推し仲間

【全5話・第2話】銀テープの奇跡と謎の推し仲間 の挿絵

命より大事な限定ラバストを拾ってくれたのは、まるでモデルみたいな超絶美形だった。
「これ、落としましたよ」って声をかけられた瞬間、俺の脳内フリーズ。缶バッジで重くなった痛バッグを抱えたまま、語彙力を失って「あ、あ、ありがとナス……!」とか奇声を上げてしまったのを今すぐタイムマシンで消し去りたい。

「ふふ、無事でよかったです。それ、物販で3時間並ばないと買えないやつですもんね」
女神(男か女かも一瞬迷うレベルの綺麗さ)は柔らかく笑った。胸元を見ると、俺と同じルナ・シーカーズの激レア初期参戦服パーカーを着ている。マジかよ、生粋の古参クラスタじゃん……!

「あの!お礼と言っちゃなんですけど、これ受け取ってください!」
俺はテンパりすぎて、ダブって持っていた激レアのラミネートカードを差し出していた。相手は一瞬驚いた顔をしたけど、「えっ、いいんですか?これ欲しかったんです!」と満面の笑み。うわっ、眩しすぎる。心臓が痛い。完全に推しを間近で見た時のそれと同じ動揺だ。

そのまま意気投合して、開演までの小一時間、ツアータオルを肩にかけながらバンドの魅力を熱く語り合った。名前は「レン」さんと言うらしい。俺が「タカです!」と自己紹介すると、レンさんは嬉しそうに目を細めた。
「タカさん、今日の席どこですか?俺、アリーナAブロックなんですけど」
「えっ!?俺もアリーナAです!もしかしてめちゃくちゃ近いかも……」

会場に入り、熱気が爆発する中でライブがスタート。ルナ・シーカーズの重低音がドームを揺らし、俺とレンさんは隣同士のブロックで狂ったように拳を突き上げた。そしてライブ終盤、銀テープが頭上に降り注ぐ最高のクライマックスでのこと。
銀テープを掴み損ねてバランスを崩した俺の手を、レンさんがキュッと強く握りしめて引き寄せてくれた。
「あ……」
顔が急接近して、ドームの照明の中にレンさんの整った顔が浮かび上がる。大歓声の中で、胸が今まで聴いたことのない勢いで高鳴った。
これってライブの熱気のせいか?それとも……?
だがライブ終了後、混雑する人波の中でレンさんを見失ってしまい、連絡先すら交換していないことに気づいた――。

※この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。

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