【全5話・第3話】痛バ奪還戦!謎の黒服男とまさかの直接対決
物販裏の路地に響き渡る怒号。紫パーカーの犯人を一喝したのは、全身黒づくめでキャップを深くかぶった、見るからにヤバそうな背の高い男だった。
「おい、イッチ。あの黒服、ただ者じゃねえぞ…!」
タクヤが俺の肩を掴み、ひそやかな声で警告してくる。確かに威圧感がハンパない。まさか転売組織の上役か? それとも別のヤバいトラブルか!? 俺とタクヤは物陰に身をひそめ、唾を飲み込んで事態を見守った。
黒服の男は、怯える紫パーカーから俺の「ZERO様神神神痛バ」をひょいと取り上げた。缶バッジ同士がカチャカチャと悲鳴を上げる。やめろ! 俺のZERO様を雑に扱うな! 叫び出したい衝動をタクヤが全力で抑え込んでくる。
黒服男は痛バをじっくりと見つめた後、冷酷な声で言い放った。
「……なんだこの愛のなさ。組んだヤツの熱量は認めるが、配列がなっちゃいねえ。真ん中の限定缶バッジ、角度が3度ズレてるぞ」
「「は???」」
俺とタクヤの声がハモった。
こいつ、いま何て言った……? 配列の角度……!?
黒服男は紫パーカーの胸ぐらを掴み上げると、さらに激昂した。
「お前みたいな愛のない転売屋が、ファンの血と汗と涙の結晶を盗んでいいわけねえだろ! ライブ開演までに持ち主に返してこい!」
まさかの同担!? しかもめちゃくちゃ熱い思想を持ったガチ勢!?
紫パーカーは「ひぇっ」と悲鳴を上げて痛バを投げ出し、一目散に逃げ出していった。路地に残されたのは、地面に落ちた俺の痛バと、それを愛おしそうに拾い上げる謎の黒服男。
「ふぅ……無事でよかった」
そう呟いて帽子を目深にかぶり直した黒服男の隙間から、チラリと見えた顔立ちに俺は息をのんだ。
(え……嘘だろ? あの顔、どこかで……ていうか、ZERO様のアー写にそっくりすぎないか……!?)
動揺で震える俺をよそに、黒服男は痛バを持ったまま、俺たちが隠れている物陰へと一直線に歩いてきたのだった!
※この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。