【全5話・第4話】推し本人が目の前に!?奇跡と怒涛のネタバラシ
足音が止まり、物陰からヌッと現れた黒服男の顔を直視した瞬間、俺の脳内メモリがオーバーヒートを起こした。
「え……Z、ZERO様……!?」
俺とタクヤが声を揃えて叫ぶと、黒服男はハッと息をのんだ。帽子のツバを深く引き下げようとしたが、街灯の光がその彫りの深いイケメンすぎる素顔をバッチリ照らしている。どこをどう見ても、俺たちが愛してやまない『ルナ・エクリプス』のカリスマギタリスト、ZERO本人だったのだ。
「シッ! 声が大きい! 近所にバレたらどうするんだ!」
慌てて俺たちの口を塞いでくるZERO様。本物の手が俺の口元に触れている。やばい、推しの匂いがする。高級なタバコとシトラスの香りが脳を揺さぶる。俺は失神しそうになりながらも、必死で頷いた。
とりあえず近くのコインパーキングの陰に移動し、落ち着きを取り戻す俺たち。
「あ、あの……なんでZERO様がこんなところで転売屋を狩ってるんですか!?」
俺が震える声で尋ねると、ZERO様は深々とため息をついた。
「……俺のファンが大切にしてる痛バを盗んで、高値で売ろうとする奴らが許せなくてな。ライブ前日はこうして変装して街をパトロールしてるんだ」
マジかよ。聖人か?? 神対応どころの騒ぎじゃないぞ。
ZERO様は俺の痛バを愛おしそうになでながら、「この初期缶バッジの配置、本当に愛を感じるよ。特に限定ラバストを傷つけないようにクリアカバーを二重にしてるあたり、お前、分かってるな」とニヤリと笑った。推しから痛バの組み方を褒められた……! 俺の推し活人生、ここで完結しても悔いはない。
タクヤも「俺も痛バ組んできました!」と興奮気味に自分のバッグを見せると、ZERO様は「おお、お前のは色の統一感が素晴らしいな!」と大絶賛。俺たち三人で「あのライブのセトリは神だった」「あの限定ラミネートカードのビジュがヤバい」と、推し活トークで大盛り上がりしてしまった。
「よし、お前ら最高に熱いファンだな。俺と友達(同担)になろうぜ」
ZERO様からまさかの『お友達(同担)認定』をもらい、感極まって泣きそうになったその時だった。
ZERO様のスマホが激しく鳴り響いた。
画面を見たZERO様の顔色が、一瞬で紙のように真っ白になる。
「やばい……マネージャーからだ。……え? 明日のライブの演出用スペシャルグッズが入った機材搬送バッグが、控室から消えた……!?」
ZERO様の呟きに、俺とタクヤは凍りついた。
※この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。