【全5話・第2話】オカンの部屋で発見された未知の痛バ
「なんでその缶バッジを知ってるんだよオカン!?」俺の叫びが実家のリビングに空しく響き渡った。
『ルナ・エクリプス』の結成当初、限定100個しか配られなかった超絶プレミアなKAITOの初期缶バッジ。それを、毎日割烹着を着てスーパーの特売チラシを吟味しているはずの我が母・恵子(54歳)が、一目で言い当てたのだ。俺が呆然と立ち尽くしていると、オカンはハッとした表情で口元を押さえ、「あ、いや、テレビで見たのよ……たぶん」と露骨に目を泳がせた。怪しい。怪しすぎる。俺が「テレビで初期の路上ライブ時代の缶バッジが映るわけねぇだろ!」と詰め寄ると、オカンはため息をつき、「ついてきなさい」と重い口を開いた。
案内されたのは、開かずの間となっていた2階の物置部屋。鍵を解除して扉が開かれた瞬間、俺は自分の目を疑った。そこにあったのは、壁一面に飾られた『ルナ・エクリプス』の歴代ポスター、そして棚に整然と並べられた大量の痛バッグ、ラバーストラップ、限定アクリルスタンドの山……!「な、なんだよこれ……俺より古参じゃねーか!!」
茫然自失の俺に、オカンは静かに語り始めた。「タカシ、実は母さんね、ルナエクがまだ『月食』って和名で地下アイドル的なバンド活動をしてた頃からのバンギャだったのよ……」。衝撃の事実。俺が推し始める10年も前から、目の前の実の母親は、過激なレス(ファンサービス)を求めて全国を飛び回るガチの遠征勢だったのだ。しかもオカンの推しは、俺と同じくヴォーカルのKAITO。「親子で同じ男を推してたのかよ……」と頭を抱える俺に、オカンは神妙な顔で秘蔵のラミネートカードを取り出した。「でもねタカシ、母さんが推し活を辞めたのには、理由があるの」。
そう言ってオカンが指差した古いラミカには、若き日のKAITOと、見知らぬ男性の2ショット写真が写っていた。「この写真の左側の人……誰かわかる?」オカンの声がかすかに震えている。俺はその顔を凝視し、絶句した。嘘だろ、この顔、どこかで見たことがある——!?
※この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。