【全5話・第3話】写真の男と我が家の意外な接点
「待て待て待て、この写真の左に写ってる男……うちの親父じゃねえか!?」
物置部屋に俺の叫び声が響き渡った。母さんは「あーあ、バレちゃった?」と、缶チューハイを一口飲んでイタズラっぽく笑った。
写真の中で、若き日のKAITOと肩を組んでダサいV系ポーズを決めている男。間違いなく、数年前に他界した俺の親父だった。え、マジで? 親父って、日曜の朝から競馬新聞読んで拳骨飛ばしてくるような、超絶コテコテの昭和頑固オヤジだったんだぞ? V系バンドマンと友達だったとか、どんな世界線だよ。
「親父とKAITOが知り合いだったの……?」
俺が呆然と尋ねると、母さんは愛おしそうに写真を撫でながら語り始めた。
「知り合いどころじゃないわよ。お父さんはね、ルナ・エクリプスの前身バンドでインディーズ時代にドラムを叩いてたの」
「はぁぁぁあ!?」
二度目の大叫び。衝撃の事実すぎるだろ! なんと俺の親父は、ルナ・エクリプスの「元メンバー」だったのだ。信じられない。あのごつくて厳格だった親父が、髪を逆立ててドラムを叩いていたなんて。
母さんによると、二人はバンド活動を通じて出会い、結婚を機に親父はドラムを辞めて堅実な会社員になったらしい。そして母さんも、家族のためにライブ参戦を封印し、陰ながら応援するファンに戻ったのだという。
「お父さんが亡くなってから、一人でライブに行く気になれなくてね。思い出がありすぎてさ」
寂しそうに笑う母さんの顔を見て、胸がキュッとなった。母さんの推し活封印の理由は、熱が冷めたからじゃない。親父との大切な思い出が詰まりすぎていたからだったんだ。
「母さん、来月の15周年ツアーのチケット、2枚あるんだ。一緒に行こうよ。親父の分もさ」
俺が痛バッグを抱え直してそう言うと、母さんは一瞬目を見開き、ポロポロと涙をこぼした。「タカシ……ありがとうね」と笑顔を見せる母さん。よし、これで親子参戦決定だ! 親父の遺影をアクスタにして持って行こう、なんて笑い合っていた。
しかし、ライブ当日まであと一週間となったある日。母さんのスマホに、見知らぬ番号から一通のメッセージが届いた。それを見た母さんの顔色が、一瞬で青ざめた。
「タカシ、大変……KAITOから、連絡が来た」
※この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。