【全5話・完結】推しがつなぐ家族の絆と未来へのメロディ
「あの、これを使ってください!」俺がバッグから引っ張り出したのは、自作痛バッグの補強用に持ち歩いていた超強力な絶縁・結束用結束バンドと、自慢の推し活ラバーストラップだった。
楽屋のスタッフが一瞬ポカンとしたが、機材スタッフが「待て、その結束バンドの耐熱性と強度は……使える!」と叫んだ。断線しかけていた重要なシールドケーブルのジョイント部分を、俺の推し活ギアで見事に緊急固定。さらに、滑り止め用に噛ませたラバーストラップ(KAITOSDキャラ仕様)が奇跡的に完璧なクッションとなり、ノイズが完全に消えたのだ。
「すげえよタカシ君! これでいける!」KAITOが俺の肩をガシッと叩いた。
開演のベルが鳴り響き、俺とオフクロは関係者席へと案内された。超満員の会場。ライトが落ち、重低音が響く。そしてライブ終盤、KAITOがマイクをとった。
「今日の最後の曲は、俺たちの恩人であり、最高のエンジニアだった男……タカシ・ケンジに捧げます。『光の道標』」
流れてきたのは、どこか懐かしく、でも圧倒的に新しい神曲だった。イントロのギターリフを聞いた瞬間、隣でオフクロがボロボロと涙をこぼした。「これ……お父さんが昔、家でアコースティックギターで弾いてたメロディだわ」
父さんは死んでもなお、自分の作った音で俺たちを、そして何千人もの観客を笑顔にしていたんだ。俺の目からも涙が溢れて止まらなかった。
ライブ終了後、楽屋口でKAITOから「これ、健二さんの遺品整理で見つかったやつ」と、一枚の古いラミネートカードを手渡された。そこには、若き日の父さんと母さんが、手作りの痛バみたいな怪しい派手バッグを持って笑顔で写っていた。
「実はな、健二さんと恵子さんも、昔は俺たちの前身バンドの熱狂的な追っかけ(推し)だったんだよ」
まさかの事実発覚。俺のこの「推し活ガチ勢」の血統は、完全に両親からの遺伝だったらしい!
あれから1ヶ月。我が家のリビングには、父さんの遺品のアコギと、俺の痛バッグが並んで飾られている。そして今、俺の隣では、すっかり「ルナ・エクリプス」の沼にハマったオフクロが、慣れない手つきで缶バッジを痛バッグに付けようと苦戦している。
「ちょっとタカシ、このKAITOさんのアクスタ、どこに飾れば映えるかしら?」
「そこは中央だろオフクロ! 構図ってものがあるんだよ!」
オタクの血は巡り、絆は深まる。天国の父さん、聞こえるか? 俺たち、今日も元気に推し活楽しんでるよ!
※この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。