【全5話・第4話】鬼上司のシークレット情報と痛バの奇跡

【全5話・第4話】鬼上司のシークレット情報と痛バの奇跡 の挿絵

「いいかタカ、これは他言無用だぞ……」
部長が胸ポケットから取り出したのは、一枚の薄いラミネートカードだった。
そこに印刷されていたのは、なんとステラ・ノイズの「初期メンバー限定・関係者用パス」。え、待って、なんで部長がこれ持ってるの!?
「実はな、今回のツアーファイナルのシークレットゲスト、初期のキーボーディストのタカシだ。俺が当時、物販を手伝ってた頃のダチでな」
「えええええええっ!??!?」
思わずドームの裏通路で叫んでしまった。タカシといえば、ファンの間では伝説とされている初期メンバーで、突然脱退して以来、一切の消息が不明だったはず……。そんな超激レア情報、一般ファンの俺が聞いていいやつですか!?
「部長、それマジですか!? タカシさん復帰って、古参泣かせどころの騒ぎじゃないですよ!」
「ふっ、だから言ったろ。今日のライブは歴史に残るってな」
普段、会社で「提出書類のフォーマットが違う!」と俺を怒鳴り散らしている鬼上司が、今は少年みたいなドヤ顔をしている。ギャップで脳がバグりそうだ。
ライブ開始のベルが鳴り響き、俺と部長はそれぞれの座席へと向かった。俺はアリーナ前方、部長は関係者席。別れ際、部長が「タカ、痛バ壊すなよ」とニヤリと笑った。
そしてライブが始まった。怒涛のサウンド、光の演出、そして中盤——部長の予告通り、シークレットゲストとしてタカシが登場した瞬間、会場全体が揺れるほどの歓声に包まれた。俺はボロボロと涙を流しながら痛バを握りしめ、ペンライトを振りちぎった。
最高すぎる……ステノイファンで本当によかった……!
終演後、完全に燃え尽きた俺は、余韻に浸りながら近所の居酒屋へ向かった。実はSNSで知り合った、同じ「ステノイ古参」の相互フォローのフォロワー・『ノイズ星人』さんと、今夜初めてオフ会をする約束をしていたのだ。
指定された個室のドアを開ける。「はじめまして、タカです!」と挨拶すると、そこに座っていた人物が振り返った。
「……え?」「……は?」
俺と、そこにいた人物の時が完全に止まった。

※この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。

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