【全5話・第1話】ゴミ袋の隙間から見えた、怪しすぎるブルーの光
ちょっと聞いてくれ。昨日、我が魂の救済者であるオルタナティブロックバンド「アルカディア・ビート(通称アルビ)」の結成10周年ライブに参戦してきたんだが、今、人生最大のピンチと驚きが同時に押し寄せてきて脳内がショートしてる。
スペックを軽く晒しておくと、俺は20代後半のしがないシステムエンジニア。ハンドルネームは「缶バッジ職人」。その名の通り、推しの缶バッジを100個以上敷き詰めた総重量約5キロの「痛バッグ」を自作し、ライブごとに肩を破壊しながら参戦するのが生きがいの限界オタクだ。もちろん職場では超大人しい「無害なモブ」を装っているし、アパートの隣人にもオタクだなんて一言も言っていない。
その隣人というのが、半年前くらいに引っ越してきた「コワモテの無口お兄さん」なんだよ。ガタイが良くて、いつも黒ずくめの服を着ていて、挨拶しても「うす…」としか言わないタイプ。俺みたいな陰キャオタクからすれば、最もエンカウントを避けたい人種ナンバーワンである。
昨日も、ライブで燃え尽きてボロボロになった俺は、痛バッグを隠すように大きなエコバッグに詰め込み、這うようにしてアパートの階段を上っていた。時刻は深夜23時。早くシャワーを浴びて、推しのラバーストラップを祭壇に飾りたい……そう思いながら自分の部屋の前に着いた時、事件は起きた。
「ドンッ、カタカタカタ……」
隣のコワモテさんの部屋から、明らかに何かを激しくぶつけるような不審な音が聞こえてきた。しかも、ドアの隙間から、アルビのイメージカラーである「怪しいネオンブルー」の光が漏れているじゃないか。怪訝に思いながら立ち尽くしていると、突然、隣の部屋のドアが勢いよくガチャリと開いた。そこから現れたのは、息を荒くしたコワモテさん。そして彼の右手には、俺が今まさにエコバッグに隠し持っているのと同じ、限定デザインの――。
※この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。