【全5話・第3話】コワモテの隣人が抱く、絶対に譲れない『命がけの誓い』

【全5話・第3話】コワモテの隣人が抱く、絶対に譲れない『命がけの誓い』 の挿絵

「命がけの依頼」って、おいおい、深夜のマンションの廊下で聞くセリフじゃないぞ。俺は一瞬、裏社会のヤバい取引に巻き込まれたのかと本気で身構えた。

黒崎さんはごくりと唾を飲み込み、俺の自作痛バッグを指差した。「これ……お前さんが作ったんだよな? この、缶バッジの配置と、隙間を埋めるラバーストラップの絶妙なレイアウト。そして、推しへの愛が溢れすぎて物理的に重くなっている、この『美しさ』……!」
熱弁がすごい。声がデカい。深夜だってば。
「実はな」と、黒崎さんはスマホを取り出し、画面を見せてきた。そこには、アルカディア・ビートの公式ファンクラブ限定で近々開催される『超プレミアム・アコースティック・ギグ』の当選画面があった。倍率100倍超えのプラチナチケットだ。「俺はこれで、最前列を引いた。キーボードのレン様の目の前、パーソナルスペースに入れる距離だ。だが、今の俺の装備を見てくれ」
黒崎さんが自室から持ってきたのは、なんとも控えめな、トートバッグの隅に缶バッジが3個だけポツンとついた、寂しげな「プチ痛バ」だった。
「これじゃダメなんだ! レン様に『あ、こいつ、にわかファンだな』って思われたくない! レン様の視界に入った瞬間、『こいつ、俺のガチ勢だ』と一目で分かってもらえる、究極の『背面武装(痛バッグ)』が必要なんだ! 頼む、お前さんの缶バッジの技術とセンスを、俺に貸してくれ!」

深々と頭を下げる大男。その姿に、オタクとしての魂が激しく揺さぶられた。最前列で推しに見られるプレッシャー、痛いほど分かる。にわかだと思われたくないプライド、超分かるぞ。
「……分かりました。俺の在庫と技術、全部突っ込んで、レン様をビビらせる神後光(缶バッジのロゼットデコ)を作ります!」
俺がそう宣言すると、黒崎さんはパァッと顔を輝かせた。だが、彼が次に口にした条件に、俺は思わず耳を疑うことになる。
「感謝する! ただ……一つだけ、どうしてもクリアしなきゃいけない致命的な問題があるんだ……。これを見せて、もし『あの人』にバレたら、俺の社会生活は終わる……」
黒崎さんが震える手で指差した、その「恐るべき障壁」の正体とは――!?

※この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。

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