【全5話・第4話】バレたら終わる恐怖の相手、その驚愕の正体

【全5話・第4話】バレたら終わる恐怖の相手、その驚愕の正体 の挿絵

「なぁ、本当にこれで大丈夫か……? 派手すぎないか?」

我が家の狭いリビングで、大の大人が二人、真剣な顔で1つのバッグを覗き込んでいる。コワモテの隣人・黒崎さんは、仕上がりつつあるアルカディア・ビートのキーボード「レン」仕様の痛バッグを見て、武者震いのように肩を震わせていた。

安心してください、黒崎さん。缶バッジの配置は黄金比、隙間を埋めるラバーストラップの角度も完璧。これを持って最前列に立てば、レン君からのファンサ(確定ファンサービス)は間違いなしです。まさに、私の缶バッジ職人としての技術をすべて注ぎ込んだ「究極の痛バ」が完成しようとしていた。

しかし、黒崎さんの表情はどこか暗い。嬉しそうに痛バを見つめつつも、時折、何かに怯えるように窓の外を気にしているのだ。
私は気になって、前回の「バレたら社会生活が終わる相手」について、思い切って踏み込んで聞いてみることにした。
「あの、そんなにオタク趣味を隠さなきゃいけない相手って、一体誰なんですか? もしかして、もの凄く厳しいご家族とか……?」

黒崎さんは深いため息をつき、お気に入りのレン君の限定アクスタをそっと撫でながら口を開いた。
「……俺の会社、お堅い不動産系でさ。俺、一応『冷徹な交渉人』とか呼ばれてる管理職なんだよ。で、その俺を容赦なく評価する直属の専務が、めちゃくちゃ厳格な人でね。常に『ビジネスマンたるもの、常に冷静沈着、無駄な娯楽に現を抜かすな』って言ってくるんだ」

なるほど。確かにそのコワモテで「レン君尊い……!」とか叫んでるのがバレたら、社内でのキャラ崩壊どころの話ではない。専務とやらに見つかったら即、冷遇ルートまっしぐらだ。

「しかも最悪なことに、その専務、今回のアルカディア・ビートのライブ当日、同じ会場のエリアに視察(仕事)で来るらしくてな……」
「ええっ!? じゃあ、会場付近で鉢合わせる可能性があるってことですか!?」
「ああ。だから、この痛バを持って歩くのは命がけなんだ。ちなみにその鬼専務の名前は、大河原(おおがわら)っていうんだが……」

大河原……? 聞き覚えのある名前に、私の心臓がドクンと跳ねた。
「え、黒崎さん。その大河原専務って、もしかして白髪交じりのオールバックで、いつもクラシック音楽のキーホルダーを鞄につけてる……?」
「な、何でそれを知ってるんだ!?」

嘘でしょ。私の頭の中で、すべての点と線が繋がり始めた。その大河原専務、私の会社の「あの人」であり、そして何より――。
パニックになる私に、私のスマホが1通の通知を告げた。画面に表示されたのは、ライブの座席確認メール。そして、SNSで繋がっている「ある相互フォロワー」からのDMだった。その瞬間、私はすべてを察して、言葉を失った。

※この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。

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