【全5話・完結】絆が繋いだドームの奇跡、僕らの推し活は終わらない!
運命のドーム公演当日、空はこれ以上ないほどの快晴!僕の手元には、黒崎さんのために徹夜で仕上げた『アルカディア・ビート』限定缶バッジ100個乗せの超重量級・究極痛バッグが鎮座していた。会場の時計台前で黒崎さんと合流すると、彼女は緊張で顔を青くしている。「職人さん、大河原専務が『例の件で話がある、時計台に来い』って……私、クビかも」
その時、「おい、黒崎」と背後から低く冷酷な声が響いた。振り返ると、そこには黒い三つ揃いのスーツを完璧に着こなした大河原専務が立っていた。威圧感が半端ない。黒崎さんが「ひっ」と短い悲鳴をあげる。しかし、僕の視線は専務の右手に釘付けになった。専務が持っていたのは、ビジネスバッグではなく、ギラギラにデコられたアルカディア・ビートの特大痛バッグだったのだ。しかも、中央に飾られているのは、僕がSNSの相互フォロワーである『デコピン師匠』にだけ送った超レアな自作バッジ。
「え……デコピン師匠……?」僕が思わず呟くと、大河原専務の鋭い眼光が揺れた。「まさか……お前が、あの『缶バッジ職人』か!?」
なんと、黒崎さんが恐れていた鬼専務の正体は、僕のネット上の推し活相棒であり、アルカディア・ビートの超古参ファン『デコピン師匠』その人だったのだ!
専務はフッと口元を緩めると、黒崎さんに言った。「黒崎、お前が連日残業を急いでいたのは、このバッグの制作打ち合わせのためだったのだな。仕事の期限さえ守れば、私は何も言わん。むしろ……素晴らしい仕上がりだ。我が同志として誇らしい」
「えええええ!?」と絶叫する黒崎さん。
専務が厳しく進捗を管理していたのは、仕事をサボらせないためではなく、「お互い万全の状態でドームに臨むため」だったのだ。そこからはもう、上司も部下も関係ない。3人で痛バッグを掲げて記念写真を撮り、開演ギリギリまで初期メンバーの尊さについて熱く語り合った。ライブ中、隣の席でペンライトを激しく振る専務の姿は、会社での鬼瓦のような表情とは完全に別人の、ただの「少年の目をしたファン」だった。
恋愛に発展するような甘い展開は1ミリもないけれど、明日からの職場は格段に居心地が良くなりそうだ。僕たちの推し活ロードは、ここからさらに加速していく!
※この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。