【全5話・第4話】最前列で目撃した奇跡の瞬間

【全5話・第4話】最前列で目撃した奇跡の瞬間 の挿絵

暗転した場内に響き渡る地鳴りのような歓声。だが、俺の目が釘付けになったのはステージ中央、スポットライトが当たる直前の影だった。
なんとヴォーカルのハルトが、俺が丹精込めて作ったあの痛バッグ……ではなく、俺たちが物販エリアで落とした「超激レア限定ラバスト」を手に握りしめていたのだ!
「……え? なんでハルトが俺の(正しくはシオンちゃんが拾ってくれた)ラバスト持ってるの!?」
パニックになりかける頭を置き去りにして、爆音がアリーナを揺らす。オープニングナンバーはまさかの初期の名曲『Starlight Cross』。俺がLumina Edgeに救われるきっかけになった、一番大好きな曲だ。
怒涛の重低音、眩いライティング、そしてハルトの圧倒的な歌声。最前列の視界は、言葉通り「光の海」だった。自分が作った缶バッジぎっしりの痛バを胸に抱きしめながら、俺は必死にペンライトを振った。周りのオタクたちと拳を突き上げ、声を枯らして叫ぶ。シオンちゃんと力を合わせて直した痛バのラミカが、ステージの光を反射してキラキラと輝いている。
「最高だ……! 生きててよかった……!」
これまでのぼっち参戦の寂しさも、準備の苦労も、全部この瞬間のためにあったんだと溢れる涙で視界が滲む。俺はこのライブで、自分の中の何かが大きく変わっていくのを確かに感じていた。
そしてライブは怒涛の本編を終え、アンコールへ。ハルトがマイクを握り、ゆっくりと客席を見渡した。
「今日、開演前に俺たちのスタッフに大切なグッズを届けてくれた熱いファンがいる。そいつのおかげで、最高の状態でステージに立てた。感謝を込めて最後の曲を聴いてくれ」
ハルトの視線が、一直線に俺のいる最前ブロックへと注がれた——。

※この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。

← 記事一覧にもどる