【全5話・完結】最高の夜を超えて僕らが歩き出す理由

【全5話・完結】最高の夜を超えて僕らが歩き出す理由 の挿絵

「開演前、大事なラバストを落として泣きそうになってたヤツがいてさ。それを一緒に探して届けた熱いファンたちがいたんだよ」

武道館の眩しい照明の中、ヴォーカルのハルトがマイク越しにそう語り始めた瞬間、僕の心臓は跳ね上がった。会場全体から温かい歓声が上がる。ハルトは僕らのアリーナAブロックをしっかりと指差し、ニッと笑った。
「お前ら最高だよ! 音楽だけじゃねえ、ここにいる全員で作るこの空間が、俺たちのLumina Edgeなんだ!」

うわあああ、報われた……! 缶バッジとラバストをジャラジャラつけた重たい痛バッグを抱えて、汗だくで開演前に走り回ったあの時間が、巡り巡ってバンドと会場全員を繋ぐストーリーになったんだ。隣を見れば、ラバストを取り戻して涙を流していた見知らぬお兄さんも、ド派手な参戦服のコワモテのお兄さんも、みんな子供みたいに顔をくしゃくしゃにして笑っていた。

ラストの曲は、彼らのデビュー曲『Brightest Pulse』。銀テープが夜空の星みたいに頭上を舞い、金色の光が武道館を満たしていく。全力で拳を突き出し、喉がちぎれるほど叫んだ。「ありがとうーーー!!!」って。言葉じゃ言い表せない感動が全身の細胞を駆け巡って、勝手に涙が溢れて止まらなかった。

ライブが終わり、会場を出ると冷たい夜風が心地よかった。いつもの僕なら「明日からまた地味で退屈な日常か…」なんて鬱々とした気分になっていただろう。でも、今の僕は全然違っていた。

痛バッグのズッシリとした重みは、僕がこの場所で誰かと繋がり、全力で生きた証だ。自分に自信がなくて、いつでもどこかで遠慮ばかりしていた僕だけど、推しを全力で愛せる自分、困っている誰かのために動けた自分を、今日初めて誇らしいと思えた。

帰りの電車、スマホの画面に映る自分は、開演前よりちょっとだけ堂々とした顔をしていた。推し活はただの現実逃避じゃない。明日を強く生きるための、最高のエネルギーなんだ。
「さてと、次のツアーの参戦服、どう組み合わせていくかな!」
僕の胸の中には、消えることのない最高の光が灯っていた。Lumina Edgeとともに、僕の人生の新しい章がここから始まるんだ。

※この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。

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