【全5話・第1話】重さ5キロの痛バと謎の整理番号1番
おい聞いてくれ。人生で初めて手に入れた「最前列確定のチケット」が、今まさに俺の部屋のデスクで不気味な光を放っている。
スペックを軽く晒しておくと、俺は都内のしがないSE(26歳・男)。唯一の生きがいは、オルタナティブロックバンド『LUNAR ECLIPSE(ルナエクリプス)』、通称ルナクリの追っかけだ。部屋には歴代ツアーTシャツがずらりと並び、自作の痛バッグには限定缶バッジがびっしり80個。総重量5キロ。もはや防弾チョッキ並みの硬度を誇るそれを担いで全国を遠征する、筋金入りのオタクである。
ルナクリは知る人ぞ知る激アツバンドで、キャパ300人クラスのライブハウスはいつも酸欠状態。ファン同士のチケット争奪戦は毎度血で血を洗う修羅場と化す。
そんな中、来月開催される「結成5周年記念ワンマンライブ」の当落発表が昨夜あったわけだ。
酒片手に画面を開いた俺は、変な声を出してビールを盛大に吹き出した。
『整理番号:A 1番』
……は? A1? 1番ってあの、ドアが開いたら真っ先に飛び込める1番ですか??
一瞬バグを疑ったが、何度リロードしても「A 1」の文字は消えない。都市伝説だと思ってた最前どセンター確定の神チケが、まさか俺の手元に来るとは。
だが狂喜乱舞したのも束の間、俺のスマホにとんでもない通知が届いた。
ルナクリ公式Twitter(現X)からの緊急告知。
『5周年記念ライブでは、最前列(整理番号A1〜3番)のお客様を対象に、メンバー全員との特別ステージ上セッション企画を実施します』
……待て待て待て。セッション!?
俺はただの運動不足なオタクで、楽器なんてリコーダーすら怪しいんだが!?
頭が真っ白になる中、さらに追い打ちをかけるように謎のアカウントからDMが届いて――?
※この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。