【全5話・第3話】渡された衣装が完全に漆黒の全身タイツだった件
おいおいおい、話が違いすぎるだろ……。
スタッフさんから「これに着替えてスタンバイしてください!」と笑顔で手渡されたのは、漆黒の布きれ。広げてみたら、頭から足先まですっぽり覆うタイプの完全なる全身タイツ(しかも胸元に大きくルナクリの月ロゴ入り)だった。
ミヤビちゃん(ゴスロリ完全装備)「……えっ、これ着るんですか?」
ケンジさん(痛バ3個持ち)「俺の体型でこれ入るかな……てか俺ら何担当?」
スタッフさん「あ、今回は新曲の演出で『月を侵食する闇の使者』としてステージを盛り上げていただく役です!演奏隊の後ろで激しく闇を表現してください!」
俺「闇を表現wwwwww」
いや、俺たちがスタジオで猛練習したエアーギターとコーラスの努力はどこへ消えたんだよ!
でも、ここで引いたら男が廃る。A1〜A3番の誇りにかけて、推しの5周年を汚すわけにはいかない。
3人で更衣室に突入し、無言で漆黒のタイツを着用。鏡を見たら、そこには怪しすぎる謎の漆黒集団が3人立っていた。シュールすぎて笑いが止まらん。
「……でもさ、これ逆にめちゃくちゃ目立つよね」
ミヤビちゃんがタイツの隙間から真剣な目で言った。
「そうだな。ステージから客席のルナクリスト全員を煽って、過去最高の景色を作ろうぜ」
ケンジさんもタイツ越しに力強く拳を握る。
そしてついに、開演のブザーが鳴り響いた。
耳をつんざく大歓声。重低音のSEが鳴り響き、ステージ袖の暗闇へ誘導される俺たち3人の闇の使者。
幕が上がった瞬間、眩いスポットライトの向こうに見えたのは、超満員のペンライトの海と、憧れのルナクリのメンバーたちの背中だった。
心臓が破裂しそうなほどの興奮と熱気の中、ボーカルのハルトが叫ぶ。
「行くぞ東京ーーッ!!闇を切り裂け!!」
その合図とともに俺たちがステージ中央へ飛び出した瞬間、信じられないトラブルが発生した――。
※この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。