【全5話・第4話】ステージ崩壊寸前で俺たちが取った行動
ステージから見下ろす2000人のペンライトの海は、息を呑むほど綺麗だった。全身黒タイツの俺たちを見て、一瞬ざわついた客席も、ギターの爆音とともに「演出か!」と大歓声に変わる。ここまでは完全に俺たちの勝ちパターンだった。
だが、人生そう甘くはない。
ヴォーカルのハヤトさんがサビ前でセンターステージへダッシュしたその瞬間、バキッという嫌な音がアリーナに響いた。特効用の巨大なバックドロップ(垂れ幕)の支柱が、過剰なスモークの湿気と振動で外れかけ、ハヤトさんの真上に倒れかかってきたのだ。
「危ねえッ!!」
気づいた時には体が勝手に動いていた。俺とケンジ、そしてミヤビの3人は、演出そっちのけで支柱めがけてダイブした。ケンジの巨体が支柱の根元を力づくで受け止め、俺とミヤビが両脇から必死にロープを引っ張る。タイツの股が裂けそうになりながら、3人で歯を食いしばって数万人の視線の中で鉄パイプを支え続けた。
観客は悲鳴から一転、何が起きたのか息を呑んでいる。曲は止まりかけ、ステージ上に異様な緊張が走った。
その時、ハヤトさんがマイクを握り直し、叫んだ。
「おいおい、闇の使者ども! 支えてくれてサンキューな! ……お前ら、このまま行けるか!?」
俺たちの心臓に火がついた。オタクを舐めるな。推しのステージを守るためなら、鉄パイプの一本や二本、腕がもげても支え抜いてみせる! ケンジが雄叫びを上げ、ミヤビが不敵に笑う。
ハヤトさんのシャウトとともに、止まりかけたイントロが再び爆音で鳴り響いた。俺たち3人が柱を必死に支える異様な構図のまま、ライブは前代未聞の熱狂へと突入していく。
しかし、本当の試練はここからだった。激しい演奏の振動で、支柱にかかる重量がさらに増していき、俺の腕の感覚が完全に消えかけていた――。
※この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。