【全5話・完結】漆黒のステージで掴んだ最高の光
腕の筋肉が完全に千切れそうだった。
全身タイツ越しに噴き出す滝のような汗、限界を迎えた両腕。だけど、ミヤビさんとケンジさんの「耐えろ!」という気迫が伝わってきて、絶対に手だけは離せなかった。
「闇を切り裂き、光を掴めェェェッ!!」
ヴォーカルの叫びと共に、代表曲のラストサビが炸裂する。
その瞬間、ステージ頭上から銀テープがド派手に発射され、何千人ものオーディエンスの大歓声がアリーナを揺らした。
支柱を必死に支え続ける俺たち3人。
客席からは「演出やばい!」「闇の使者かっけえええ!」という熱狂の嵐。
そして曲が終わると同時に照明が落ち、俺たちはスタッフの手を借りて無事に支柱を固定し、舞台裏へと崩れ落ちた。
床に大の字になって肩で息をする俺の横で、ミヤビさんもケンジさんも完全に燃え尽きていた。
そこへ駆け寄ってきたのは、なんとメンバー全員。
「お前たち、本当にありがとう! 最高のステージになった!」
ヴォーカル本人に肩を叩かれ、固い握手を交わした瞬間、全身の痛みが全部吹き飛ぶくらいの震えが走った。
ライブ終演後、全身タイツを脱ぎ捨てて元の推し活フル装備(痛バ&自作参戦服)に戻った俺たちは、アリーナの外の夜風に吹かれていた。
「……タケシくん、最高だったね」
「ああ、一生忘れられないライブになった」
ミヤビさんとケンジさんと顔を見合わせて、思わず笑い合った。
誰かと付き合うとかそういう次元じゃない。同じバンドを愛し、同じ熱狂の瞬間を共有し、ステージを共に作り上げた仲間としての強い絆がそこにあった。
家に帰り、ボロボロになった痛バッグを壁に掛ける。
缶バッジに反射する部屋の明かりを見つめながら、俺は深く息を吐いた。
ただ客席から祈るように眺めていた推しの世界に、ほんの一瞬だけど自分も確かに存在していたんだ。
オタクやってて本当によかった。
これからも俺は、全身全霊で推しを愛し、現場に通い続ける。
だってライブは、こんなにも人生を最高にしてくれるんだから。
※この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。